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西武ライオンズが2008年からの球団名変更を検討しているようです。現時点では、地域名として「埼玉」もしくは「所沢」を入れること、球団名に会社名「西武」を残すかどうかを含めて協議されているようです。埼玉県のプロスポーツでは、浦和レッズが大きな成功を収めていることが有名ですが、果たして、西武ライオンズも第2の浦和レッズになれるのでしょうか？

以前コラムで、東京ヤクルトスワローズについて、考えを書きました。どんなに地域密着を標榜しても、球団名に企業名がついている限り、球団は地域のものではなく企業のものであると。西武鉄道（現親会社はプリンスホテル）には、単なる企業イメージだけではなく、不祥事のイメージもあります。親会社のイメージとして、あまり成功していないヤクルト以上に良くないイメージがあるので、思い切って、西武は身を引いて球団名に会社名を入れないほうが良いというのは言うまでもありません。

さらに、球団名を「埼玉ライオンズ」とするならば、「西武」という名前は埼玉県全体のコンセンサスを得るのは難しいのではないでしょうか。西武鉄道は、埼玉県の西側のごく一部地域で運行しているだけで、中部、東部、北部などではあまり親しみのない鉄道です。ライオンズの保護地域である埼玉県全体での運営（もちろん試合を行うという意味）を考えるならば、いっそう「西武」という名前は邪魔になります。

ただ、「埼玉」が良いのか、「所沢」が良いのか、というのは悩むところです。地域フランチャイズとして地域密着を標榜する場合、ファンにとって、愛する球団があると共に愛する「地域」がなければ、熱狂的な応援を繰り広げることが難しくなると考えるからです。愛する「地域」として、「埼玉」と「所沢」を考えるならば、果たして、「埼玉」という単位でファンは地域を愛せるのかというと、疑問に感じてしまうのです。埼玉県は、「埼玉」という単位で一丸となるような土地柄ではないと思うのです。私は以前、埼玉県に住んでいたのでわかるのですが、京浜東北・埼京線沿線、西武池袋・新宿線沿線、東武東上線沿線、東武伊勢崎線沿線では、まったく同じ県である意識などないのです。それぞれのターミナル駅（池袋・北千住など）との密着、即ち、縦のつながりはありますが、県内の横のつながりはないのです。結果、球団名を「埼玉ライオンズ」とした場合、ファンの意識の中で自分と球団・地域のつながりが広いけど薄いものになりかねません。

それならば、「埼玉ライオンズ」として広くファン層を開拓するよりも、「所沢ライオンズ」として数は少なくとも熱狂的なファン層の開拓を推し進めるべきかと思うのです。浦和レッズの名称上のフランチャイズは、「浦和」という人口50万人程度の地域です。その50万人のうちの何パーセントかのファンの熱狂が、今や全国に広がり、日本中に熱狂的なレッズファンを生んでいます。ライオンズも、所沢30万人と周辺地域を含め約40万人の中で熱狂的なチームを作り上げていくべきだと私は思います。所沢から全国に熱さを発信すべきです。

例えとして、大晦日のテレビ番組がわかりやすいと思います。嗜好が多様化し、性別でも年齢でも文化が断層化する昨今、老若男女の好きな歌手をゴッタ煮状態で番組を作っている「紅白歌合戦」と比較して、本来コアな一部の格闘ファン向けであるはずの格闘番組は話題性でも視聴率でも負けていないのです。普段、格闘番組に興味のない人達にまで興味を持たれること、これがまさに「熱さ」なのだと思います。ライオンズは、埼玉県全体のことを考えるより、所沢をヒートアップさせることが重要だと思います。

「埼玉ライオンズ」という名称には、埼玉県の人口の多さに頼ろうという意図が見えます。もちろん、観客動員のためには人口の多さは重要です。ですが、埼玉県の人口の多さに甘えるのではなく、所沢を熱くして、球団だけではなくて、球団とファンを通して所沢市という地域ごとブランド力を高めてやろうという気概で球団運営にあたって欲しいと願います。

新球団名になっても、もっともコアに球団を支えるファンは、今まで応援してきた所沢のファンです。どんなに観客動員が減っていても、所沢のファンはライオンズにとって大きな財産です。「所沢ライオンズ」とすることで、彼らはどんな気持ちになるのか、私は、悪い気持ちにはならないと思います。「今まで以上に応援してやろう！」と思う人が多いのではないでしょうか。熱狂的なチーム作りの第一歩はここにあるのだと思います。「埼玉県民みんなのもの」ではなく、「俺たち（私たち）所沢のもの」だと所沢のファンが再認識することから、新しいライオンズの歴史のはじまりです。

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