東京街コラム3~"東京" "ヤクルト" スワローズの地域戦略~

古田選手兼監督(PM)の主導による「Fプロジェクト」元年をもうすぐ終える東京ヤクルトスワローズ。ひとつの目玉として、球団名に"東京"を付け、東京のフランチャイズ球団であることを強く浸透させようとしました。結果は、初年度ということもありますが、あまり芳しくなく、観客動員の大幅増にはつながらなかったようです。

そこで、東京で働き東京で暮らす人々が「東京」という地域にアイデンティティを持てるのか、少し考えてみたいと思います。

都道414号線いちょう並木と聖徳記念絵画館

都道414号いちょう並木と聖徳記念絵画館

「東京」云々書く前に言いたいことがあります。

球団名に「地域名」を付けたところで、親会社の「企業名」も一緒に付いていれば、球団は「地域」のものではなくて「企業」のものという認識を持たれてもしょうがないことだと思います。球団名で親会社の認知度や信頼度が増し、会社の宣伝やイメージを広めることができます。これだけで企業が球団を持つ価値があるというものです。その上球団単独で採算を得ようなんて少し虫が良すぎると思いますがどうでしょう。ならば、"福岡" "ソフトバンク" ホークスや、"北海道" "日本ハム" ファイターズ、"東北" "楽天"ゴールデンイーグルスの成功はどうなんだ?という意見もあるかもしれませんが、これらの地域はプロ野球球団の誘致が悲願だったこともあり、成功したのではないでしょうか。本当はやっぱり企業名はない方がいいと思います。

まず、"東京" "ヤクルト" スワローズよりも、"東京" スワローズの方が、「東京」の地域球団を標榜するにはいい名前だというのがまず第一。

そして、「東京」という地名が、地域球団のつける地名としてふさわしいのかについて。私はふさわしくないと思います。なぜならば、「東京」は大きすぎて、東京で暮らしたり働いたりしている人々にとって、アイデンティティを持ちにくい地名だと思うからです。「東京で働いてる」、というよりも、「新橋で働いてる」、という方が、普段の生活の中でシックリ来ると思いませんか?東京には個性ある街が多すぎて、「東京」という大きな単位ではアイデンティティを感じにくいと思うのです。

Fプロジェクトでは、神宮球場のある新宿区や渋谷区、隣接する港区を中心に地域に密着する旨が謳われています。ならば、"渋谷"ヤクルトスワローズ、とか、"新宿"ヤクルトスワローズ、なんてどうでしょうか。もしくは、神宮から一番近い街である「青山」でもいいと思います。「東京」というだけではイマイチどこの球団かつかめないものが、パッと開けてくる感じがしませんか?渋谷にしろ新宿にしろ、都区部域を超えて求心力のある地名です。渋谷や新宿で働く人、遊ぶ人、渋谷や新宿を発着地とする沿線住民の心を捉えると思うのですがどうでしょう。

明確に「渋谷」や「新宿」と街を指定することで、「東京」をフランチャイズとするもう一方の球団である読売ジャイアンツと明確な地域分けをすることも可能だと思います。すなわち、新宿区や渋谷区を境にして、読売ジャイアンツを文京区や千代田区以東に追いやり、東京の西側に球団であることを主張することができると思うのです。かつては全国的な人気があったジャイアンツですが、福岡や札幌での地域球団の成功もあってその人気に陰りが見える昨今、いずれは地域密着を図ってくることでしょう。そうなった時に、スワローズが渋谷や新宿で確固たる地位を築いていれば、ジャイアンツの地域密着戦略を東京の東側に限定させることができると思います。

スワローズはせっかく地域密着戦略でジャイアンツに先行したわけですから、古い価値観に囚われずに思い切った方向へ進むべきではないでしょうか。

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