東京新聞の「特報」で、東京都が月3000円でホームレスの方々に2年間アパートを提供し、その間に職に就かせ自立を促そうという支援が行われいたが、その最初の期限を迎えようとしているにもかかわらず自立できる人は半数程度という記事が掲載されていました。
入居した人には最低月に6日の仕事が提供されるという話だったのが、実際は月2日程度だったということも書いてありました。アパートに移った人のテントは撤去され、2度と公園には戻れないということもあり、はじめからこの支援に参加しないホームレスの方々もたくさんいたそうです。
おそらく、この支援に携わっているNPOや東京都の職員の方々は懸命に働いていたと思います。支援に参加してアパートに移った人の中には、社会復帰のために必死に努力した人がたくさんいたことと思います。ただ、この支援自体、ちょっと問題点が多いです。
まず、支援対象者が、新宿中央公園など一部の公園で生活していた人々に限られること。末端で支援する方々は必死に働いても、計画段階では単に公園からホームレスを排除しようという目論見だけだったのは明らかです。その証拠に、2年経過する今後、公園の警備を厳重にして戻って来れない措置をとるそうです。アパートに移ったけれど社会復帰できず、アパートから出されてしまった人はどこに行けばいいのでしょう。公園にさえ戻らなければ路上で生活してものたれ死んでしまってもいいということなのでしょうか。要は公園をきれいにしたいだけと感じてしまいます。
あとは、職に就くということに関する計画段階での甘い見通しです。世の中は良くなったと言えども景気はそれほど良くなく、それに加え、中高年者の再雇用が難しい状況です。ホームレスの方々も高齢化が進んでいます。そんな中で、本人がどれほど努力しようともどうにもできないということは十分に考えられるわけです。2年間の支援を満了しても社会復帰の道筋が立たなかった場合にどうするのかという計画が欠如しています。
普通に職に就き、家もある人にとって、ホームレスの方々はまったく別世界の人に映るかもしれません。「あんな生活しかできないのは本人の努力が足りないからだ」なんて平然と言う友人がいて驚いたことがありますが、実はこの認識が普通なのかもしれません。でもこの認識は現実を理解したものではありません。中にはそういう努力不足の人もたくさんいるでしょうが、すべてではないのです。知人の借金の保証人になって身を隠さざるを得ない人、更生後に社会復帰しようとしたけど拒絶された人、など、本当は社会に復帰したいのにできない人がたくさんいるのです。
いろいろ問題はありますが、最も重大なのは、世間がホームレスの方々へ向ける視点なのではないかと思います。言動で判断するのではなく、最初からレッテルを貼ってしまうこと。私は大学時代、東京駅のコンビニでバイトしていて、その時に多くのホームレスの方々と接しました。店員の中には、最初からレッテルを貼って物を盗まないかあからさまに監視する人が多くいました。結果、確かに物を盗む人は多かったのですが、物を盗むのはあくまで個人であって、ホームレスの方々全体なわけではないのです。「Aというホームレスが物を盗んだ」からと言って、「Bというホームレスも物を盗む」という式は成り立たないのです。
レッテルを貼るから心を閉ざす、決めつけから来るホームレスの不利益が非常に多いと思います。レッテルが社会への復帰の道を閉ざす場面が非常に多いのではないかと、コンビニバイトからだけでも強く感じました。社会復帰を望んでも、世間は偏見だけでシャットアウトしてしまう。レッテルを貼って社会から追放してしまうやり方は、大昔から続く悪しき習慣です。お金持ちに良い人も悪い人もいるのと同様、ホームレスにもいろんな人がいます。世間が無用な偏見を捨て去ることが、この支援事業の成否を決めるのではないでしょうか。まったく別の世界ではなく、すべての人に関係のある話だと思います。
参考にした記事:http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060827/mng_____tokuho__000.shtml
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